糖質(炭水化物)
糖質とは
「トレーニング中の糖質摂取が・・・」とか、「トレーニング後はプロテインと炭水化物を・・・」などと言われても、違いがよく分からない方がいるかもしれませんが、正確には炭水化物=糖質+食物繊維です。
ただ、炭水化物=糖質と考えても特に問題があるわけではありません。
ちなみに海外製のサプリメントは炭水化物をtotal carbohydrate、糖質をsugar、食物繊維をdietary fiberと表記しているので、ラベルを見る時の参考にして下さい。また、日本ではマルトデキストリンなどの糖質のパウダーを「カーボパウダー」と呼ぶことが多いようです。
糖質の働き
糖質は摂取してから素早くエネルギーへと変わります。このため、アスリートには特に重要な栄養素と言えるでしょう。
ただし、脂質と異なり、体内には少量しか蓄えておくことができないので、運動前後、運動中に補給することが重要です。
| ■ 糖質の種類と特徴 | ||
| 分類 | 種類 | 特徴 |
| 単糖類 | ブドウ糖 (グルコース) |
一定量が血糖として血液中に存在し、一定量以上は筋肉や肝臓でグリコーゲンとして貯蔵されるか、脂肪として貯蔵される。 |
|---|---|---|
| 果糖 (フルクトース) |
小腸で吸収された後、肝臓に送られエネルギー源となる。 | |
| ガラクトース | ||
| 二糖類 | ショ糖 (スクロース) |
砂糖の主成分。小腸でブドウ糖と果糖に分解される。 |
| 麦芽糖 (マルトース) |
グルコース2分子の構造です。小腸で2つのグルコースに分解されます。 | |
| 乳糖 (ラクトース) |
小腸でグルコースとガラクトースに分解されます。 | |
| 少糖類 | オリゴ糖 | 消化されず大腸に届く難消化性(消化性オリゴ糖もあります)。整腸作用と血糖値を抑える働きがあります。 |
| 多糖類 | デキストリン | 口腔内でマルトースに、小腸でグルコースに分解されます。 |
| デンプン (スターチ) |
||
| グリコーゲン | 体内ではグルコースから合成され、筋肉や肝臓に蓄えられる。摂取したグリコーゲンはグルコースとして吸収される。 | |
糖質が不足すると筋肉が分解される
全ての活動のエネルギー源となるグリコーゲンは肝臓と筋肉に蓄えられ、それぞれ「肝グリコーゲン」、「筋グリコーゲン」と呼ばれます。
肝グリコーゲンは血糖値が低い時にグルコースとして血中に放出され、血糖の量を一定に保ち脳のエネルギーとなります。筋グリコーゲンは血糖にはならず、筋肉のエネルギー源となります。
肝グリコーゲンが少なくなると、筋肉を分解してアミノ酸を取り出しグルコースに変換して、血糖のレベルを保とうとする糖新生が起きます。筋グリコーゲンが少なくなると、筋肉を分解してアミノ酸(主にBCAA)を取り出してエネルギー源として利用しようとするため、やはり筋肉の分解が起きてしまいます。
このため、運動後は速やかに糖質を摂取してグリコーゲンを回復させることが重要です。運動後30分以内に摂るべきとされている糖質の量は、運動の種目や強度で変わりますが1〜1.2g×体重(kg)とされているようです。
しかしあまり細かく拘らず、おにぎり(炭水化物約40g)やバナナ(糖質約22g)やウイダーinゼリー・エネルギー(炭水化物約45g)や、マルトデキストリンなど好きなものや利用しやすいもので良いと思います。
運動直後にタンパク質と糖質を補給
また、運動や筋トレの直後にプロテインを飲む人が多いと思いますが、タンパク質と同時に糖質を摂取すると効果的です。
糖質を摂取すると血糖値が上昇するため、血糖値を下げる働きがあるインスリンというホルモンが膵臓から分泌されます。インスリンの分泌により筋肉の細胞がアミノ酸を取り込みやすくなるため、筋タンパク質合成がより高まります。
インスリンとGI値
インスリンは筋タンパク質の合成を促進しますが、脂肪の合成も促進します。特に糖質を過剰に摂取したり、空腹の状態で摂取すると血糖値が急激に上昇するため、血糖値を急いで下げようとインスリンが大量に分泌されます。このような状況は肥満につながります。
糖質には吸収の度合いを示すGI値(グリセミック・インデックス)という指標があります。GI値の高い食品は血糖値を急激に上げるためインスリンが大量に分泌されます。逆にGI値が低い食品は血糖値の上昇は緩やかなため、インスリンの分泌量は低くなります。
GI値はグルコース(ブドウ糖)を100とした場合の数値で表していますが、いくつ以上が高GIといった基準にも差があったり(70以上とすることが多いようですが)、調理法でも変わるようなので、あくまでも目安として捉えてください。
運動後などはインスリンによる筋タンパク質合成やグリコーゲンの補給という意味で、吸収の早い糖質を摂取することが大切ですが、それ以外の食事ではGI値の低い(血糖値を急激に上昇させない)食品を選ぶことを心がけましょう。
特に運動直前の甘いもの(GI値の高いもの)の過剰な摂取は血糖値が急激に上がり、急に上がった血糖値を下げるために大量のインスリンが分泌されて、逆に血糖値が下がりすぎてしまいます。そのために疲労感やパフォーマンスの低下、ひどい場合は筋肉の痙攣や意識が朦朧とするなどいわゆるインスリンショック(運動誘発性低血糖)を引き起こしやすくなるので注意しましょう。
| ■ 主な食品のGI値の目安 | ||||||
| 穀物・麺類 | 野菜 | 果物 | 乳製品・卵 | 豆類 | 菓子 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 高GI (70以上) |
食パン フランスパン もち 精白米 うどん |
人参 かぼちゃ ジャガイモ 山芋 トウモロコシ |
なし | 練乳 | こしあん つぶあん |
ケーキ類 キャラメル クッキー せんべい 大福 |
| 中GI (56〜69) |
玄米 パスタ |
里芋 栗 |
パイナップル レーズン スイカ バナナ ぶどう |
アイスクリーム | なし | カステラ プリン |
| 低GI (55以下) |
そば 全粒粉パン |
上記以外のほとんどの野菜 | りんご 柿 さくらんぼ イチゴ オレンジ |
ヨーグルト バター 牛乳 卵 チーズ |
グリーンピース 油揚げ 豆腐 納豆 ピーナッツ |
ブラックチョコレート |
糖質のサプリメント
サプリメントブランドが製品化している糖質補給やパフォーマンス向上が目的の製品は、ほとんどマルトデキストリンかクラスターデキストリンになります。
食品と違いパウダーであるため、トレーニング中のドリンクやトレーニング後のプロテインに混ぜて、簡単に摂取することができます。
マルトデキストリン
マルトデキストリンは吸収が早いため素早くエネルギー源となることができます。そのため運動中・後の糖質補給のためによく使われる成分です。
粉飴
粉飴と呼ばれる製品もあります。粉飴は成分としてはマルトデキストリンとほぼ同じですが、低分子化の度合いを表すDE(デキストロース当量)が異なります。DEは0に近いほどデンプン、100に近い(分子量が小さい)ほどブドウ糖の特性になります。DEが10から20をマルトデキストリン、DEが20を超えると粉飴と呼びます。
粉飴をエネルギー補給に使ってる方も多いと思いますが、アスリート向けのサプリメントブランド以外にも様々なメーカーが出していて数も非常に多いため、製品の紹介は割愛しております。
クラスターデキストリン
クラスターデキストリンは江崎グリコが世界で初めて開発に成功した高度分岐環状デキストリンです。DEが5未満とされている高分子であるため、運動時の消化吸収が穏やかでインスリンが過剰に分泌することがありません。
また、クラスターデキストリンは浸透圧が低いため、胃に溜まることがなく膨満感や胃の不快感がありません。マルトデキストリンで胃もたれなどを感じる場合は、クラスターデキストリンに変えてみると改善するかもしれません。低浸透圧のためハイポトニック飲料としてトレーニング中のドリンクに使えます。
クラスターデキストリンはマルトデキストリンと比べるとコストは高くなります。